コラテラル

夜だ、夜だなあ。ひたすら夜のタクシー内シーンが続き、ロサンジェルスでタクシーの、あの、行くあてのなさぐあいが思い出される。そんなアホな、という設定が随所に見られるが、これは緻密なストーリーに裏打ちされたスナイパー映画というよりも、犬と鹿とタクシーとメトロと夜の、都市伝説映画なのだ。そして都市伝説でありながら、空気の確かさがすばらしい。
 コラテラルは、ロサンジェルスのご当地映画でもある。ぼくは、前半に出てくるロサンジェルス東部や南部のほうは行ったことはないのだけれど、それにもかかわらず、妙な既視感がある。この映画は、特定のロケーションというよりは、人気のない夜のロサンジェルスの感じをうまく出していて、水分を得たスポンジのように数ヶ月前の気分が蘇ってきた。
 で、ご当地映画となれば、あのシーンはあのへんかな、などと考える人はやはりいるもので、Collateral Filming locationsを見ると、ロケーションのモザイクぶりがよくわかる。ロサンジェルスに滞在経験があると楽しめるかも。