2008-01-01から1年間の記事一覧

友達@世田谷シアタートラム(岡田利規演出)

11/22のマチネーで、「友達」を観た。 舞台には、建材用の金属パイプを曲げてつないだだけの、簡素な部屋らしきもの。そこには壁も、床の間仕切りすらなく、二つのドアがなければ、それは部屋とすら判らない。 冒頭、まだ薄暗い舞台の上を、闖入者たちが現れ…

声の召喚

オバマの演説を聴いていると、つくづくアメリカの政治というのは弁論術の歴史であったのだなと感じる。 そして、オバマの巧いところは、そうした弁論の歴史を汲み取り、先人のことばを自分の言葉に重ねているところだ。 彼が話すと、歴代の大統領や黒人指導…

106才を折り返し、月に触れる

オバマの勝利演説はすごかった。 とりわけ後半、106才の婦人の指先が電子投票スクリーンに触れる瞬間を起点に、過去106年と未来106年を折り返すくだりは、壮大なる名調子である。そこで語られている歴史は、多分に紋切り型であり、いかにもアメリカ的まとめ…

月光異聞

夕暮れどき、鍋尻山から上がった月が大きい。 ふと、山に近づくほどに月が大きくなるような気がする。山のすぐそばに、人の背丈の倍ほどの月があって、そこに行けば、本当の月の大きさが測れるのではないか。 などと思うのは、先週見た維新派の舞台の記憶が…

ボヴェ太郎『Texture Regained -記憶の肌理-』@伊丹アイホール

10/11 伊丹へ。乗り換えがうまく行けば、彦根から伊丹は1時間40分ほど。 公演前、ボヴェさん、企画の小倉さんと少しお話してから本番。 文字を読む 踊りに読む 何もないリノリウムの平台を見下ろすように、数十脚の客席が設えられている。客入れの音楽さ…

呼吸機械、群読、小さい人間

6:30に会場に着くと、もうあたりは暗がりで、舞台に入ると、水平線の向こうにわずかに船の灯りが見えるのだが、客席が明るく照らされているので、向こうに広がっているのが湖なのか、それとも舞台が果てしなく広がっているのかがわからない。 その、水面とも…

ラジオ 沼:384 より/接触と帯気 ポニョの歌のこと

まだ、ポニョ祭りなんですけどね。 ポニョといえば、あの、頭にこびりつくような歌なんですけれども、ぼくはあれを街のあちこちで聴きながら、途中で歌われている擬音語がどうも聞き取れないんです。 わくわくちゅゆ、って言ってるのかな。こころも踊るよっ…

Perfume ”GAME” もしくは貧血と観測(マカロニ篇)

「マカロニ」は温度の歌だ。 「見上げた空は高くて だんだん手が冷たいの」と、早くも貧血少女は体温の危機にさらされている。危機にさらされているにもかかわらず、「暖めて」というのではなく、「キミの温度はどれくらい?」と聞いて手をつなぐのである。…

Perfume ”GAME” もしくは貧血と観測(ポリリズム篇)

むかしよく貧血で倒れたころ、「ああ、これは気を失うな」とわかる瞬間が、意外に心地よかったのを覚えている。お笑い芸人が階段でつまずきながら用意周到に体の向きを調節するように、薄れ行く意識の中でかろうじて、前後にばったり倒れて致命傷にいたるの…

4’32”に起こったこと

予習と初演 ずいぶん前のことだが、コンサートに行くという知人が「ああ、行く前に歌詞ちゃんと覚えて予習して行かないと」と言うので、驚いたことがある。 もちろん、何度も繰り返し聞いた曲を聴きにコンサートに行くこともあるけど、あらかじめ知らない曲…

サイン波の切/断、音源と身体

サイン波の切/断 以前、大友良英さんと、単行本用の対談をしていたときに、Sachiko Mのサイン波のことが話題になって、ぼくはなんとなく、「小さいのにいきなり突き抜けてくる感じ」というような言い方をした。 とりわけONJOのような大人数の編成で明らかに…

指先から群島へ。北里義之「サウンド・アナトミア」

年末に北里義之氏の「サウンド・アナトミア」を読み、以来、この本について折りに触れて考えることがあった。 本の副題には「高柳昌行の探求と音響の起源」とあるけれども、じつを言えば、ぼく自身は、高柳昌行の音楽の熱心な受け手であったとは言い難い。だ…