かえる目@名古屋

 全員起きると昼過ぎ。かわりばんこにシャワーを浴び、東海道線へ。
 彦根のタクシーではバルブもなか話に和する運転手、名古屋でタクシーで、グレン・ミラー寺内タケシを称賛しビートルズの歌唱力に疑問を呈する運転手。今日はタクシーが大アタリだな。
 まずは本山のマルチプル・チョイスでやってる池田朗子展へ。偶然、千野さんも来ていてひさしぶりにちょっとお話。
 階上の展示は、絵はがきに載っていたものとはかなり感じが違っていた。なんといっても、床に雑誌を散らかした形がおもしろい。立って眺めて、まずなんだろうと思い、そのうち腰が落ちて床の目線に近づくべく身をかがめることになる。そしてようやく事態が飲み込める。特別な機械はなにひとつないのに、視点がナヴィゲートされる。これはやられた。
 下で池田さんと話してるとき、彼女はこのプロセスを「ガリバー・トンネル」と呼んでいた。まさに言い得て妙。いきなり小さくなるのではなく、小さくなるにいたるプロセス、小ささにいたる眠り。
 帰りに、通りかかった古書店ですばやく「日本郵政百年史」。お買い得な値段。

 新栄町のカノーヴァンへ。
 昨日とほとんど同じだが、「Liliput」だけは楽器の編成がまったく違うので、JRの中で書いた譜面を配って集中的にリハ。3度ほど合わせたら、もう曲らしくなっていた。このメンバーだと、みなまで言わずともおまかせしているうちにどんどん曲ができるので楽しい。もちろん、ぼくの頭の中の曲と違うのだが、ぼくの頭はできた曲に遅れて、「あ、いいじゃん」と思うのである。  名古屋ネイティブのスタッフにご当地情報を教えてもらって、近くのスターバックスで「東京事件」を「名古屋事件」に書き換える。4番の歌詞を覚えると、カノーヴァンへの道順がわかるという特典がついてくる。

名古屋事件

観音様の御利益に
ひかれてきたのさ 下町名古屋
パソコン買って安い服見て芝居見て
大須では大須では 売られていない あの事件

むかしながらの家並みを
眺めていたのさ 寺町名古屋
駄菓子氷屋 駄菓子氷屋 エスニック
日泰寺日泰寺 覚王山のあの事件

別れの伝説 真に受けて
一人できたのさ さいはて名古屋
これがコアラかこれがコアラか有袋類
山東山 けものにたずねたあの事件

ココイチ ローソン カノーヴァン
目印たどって来たのさ名古屋
ライブハウスがまっとぎょーさんしとりゃーす
新栄新栄 2番出口の あの事件

 本番はYuko Nexus6 + 木下和重のあまりにハイパーアクティブなパフォーマンスの数々。ほとんど暴れ馬を観る感じである。
 そのあと、地味にかえる目を演奏。歌唱力は乱高下だが、バンドの演奏は確実に潤いを増している。そろそろレコーディングの季節か。なんと東京から駆けつけてくれたコグさん、アチャコさんの前で「女学院とわたし」を唄うと、歌は誰かと誰かのあいだにしかないのだということが改めてわかる。
 池田朗子さんの作品にインスパイアされた新曲「Liliput」はこんな歌詞。メロディに混じる関西弁は富岡多恵子の影響。

Liliput

つるつるの街
グラビアのページに 雨がまばたく
世界はまだ 二次元でまどろんでる
立ち上がる ちいさいひと ちいさいひと
見上げる景色にいちばん最初にきづいた

きりぬきの街
ポップアップ絵本のページに 傘がひらいた
世界はもう 虹色をまちかねてる
立ち上がる ちいさいひと ちいさいひと
水たまりの空にいちばん近いまなざし

立ち上がる ちいさいひと ちいさいひと
この街におちる 日曜日のひとかげ

 ライブ終了後、「東天門」で、コグさん、アチャコさん、そして中尾さん、ゆうこさんと打ち上げ。ソウル風に小皿がどんどん出てきて鍋もうまく、うれしい。

 強い雨の中、ゆうこさんの運転で豊田の宿舎へ。