iPodで呼び出されるカセット感覚

 モーツァルト、といえば小林秀雄なのだが、それを感情論として読み直すこと。もうひとつ、先月から断続的に考えているiPodや原音の話だが、小林秀雄の「蓄音機」は、メソッド派の行き着く先の議論として見逃せない。考えてみると、ぼくのユーミンに対する聞き方はほとんどこの「蓄音機」で書かれていることに近い。たとえば、「ヴェルヴェット・イースター」のイントロをiPodで聞きながら、カセットテープのよれや、回転むら(ワウフラッタ)が引き起こすピアノの持続音の突き刺さるようなびびり具合(あるいはその不在)を、聞き取っている感じ。
 そして彼女の「ヴェルヴェット」「いっぱい」といった促音便の前後に現われる、声のはかなさは、カセットで聞いてはっきりと感じられるものだった。
ラジオ 沼 232 促音便をうたうユーミン