2005-01-01から1年間の記事一覧

塩の迷路

ギャラリーそわかの地下は、山本基による塩の迷路。これは美しかった。迷路と塩の境界域あたりを見つめていると、白い砂塵がもやっているように見える。そこから向こうには塩の丘、塩の岩。明らかに鉱物とは異なる透明感とこわれやすさを感じさせる。そして…

夢の箱、夢の光源

The Road not Taken '05会場のひとつ、ギャラリーそわかの二階と地下にやられた。 二階の倉本麻弓作品は、手に乗るほどの34個の箱の中に彼女の夢を記述したもの。それが、いわゆる美しい夢とは違って、むしろつげ義春のマンガにも通じるような夢見の世界で、…

振り返ることの再現

今日の「きらきらアフロ」でも、松嶋の「時空間ルーペ」が出た。 今日のエピソードはけっこう複雑で、これまた松嶋の得意技である「後日譚による思いがけない展開」だったので、詳しい説明は略す。 問題の箇所は、「見たことはあるのだがしかとは思い出せな…

夢を揺さぶる顔

「きらきらアフロ」における鶴瓶のトークで、とくに注目すべきは人物の交替。落語では上下をつけることによって人物の区別をつけていくことが多いが、鶴瓶はこれ以外に、正面を向いたまま瞬時に人物を変える技をいくつか持っていて、これがすごいのだ。 「東…

時空間のルーペ

「タイで松嶋尚美が番傘をふっかけられた話」(2003版)で、松嶋尚美は、安い店を通り過ぎるところを描写するときに、いったん「別の店があってんやん」と図解的視点を取り、そのあといったんわざわざ体をバックさせて、もう一度、そこを通り過ぎるところを物…

POPO、Brazil、カリフォルニアドールズ@大阪ブリッジ

夜、新世界Bridgeへ。POPO、Brazil、カリフォルニアドールズという豪華メンバーによるライブ。 POPOはトランペット二本とオルガンという変わった編成のユニット。これが予想外によかった。ときおりスチュアート・モーハムを思わせる、ラインのはっきりしたハ…

冥界鉄道の旅

大谷能生さんから未発表の「鏡の国のデューク楽団」。1942年、デューク楽団の旅物語。大城のぼるの「汽車旅行」のように楽しく読み進めていくと、なんとこれが、死者がレコードに針を落として生者を蘇らせるという話なのだ。おもしろかった! これ読んでから…

トークの視線

2003版収録の「松嶋尚美がタイで番傘の値段をふっかけられた話」というのを分析した。 話の前半では、松嶋尚美は観客のほうを向いて、TV収録で行ったタイのマーケットで番傘を買ったエピソードを語っている*1。ところが、よその店ではるかに安値で売っている…

子音スローモーション

次のセットはカヒミ・カリィ+ONJO。昨日と違って、減衰するビブラフォンではなく持続するサイン波が入り、ホーンセクションを増やした。大友さんはそのホーンの対面に座るという配置。浜田真理子が母音の人ならカヒミ・カリィは子音の人。声帯の震えによっ…

唄うパワー・オブ・テン

ワッツタワーズには圧倒された。変拍子自在のバンド歌唱をカタパルトにして、途中、ヴォーカルとピアノの「ヒゲの未亡人」スタイルによって宇宙に飛び出し、再びバンド演奏に戻ってくるそのさまは、あたかも「唄うパワー・オブ・テン」。「吉田寮」や「メト…

歌謡曲と街の灯

あと、泣けたのは高良さんのビブラフォンで、ときおりバンド演奏の休止符で表われるその響きから、「街の灯」ということばが思い浮かんだ。 ぼくは歌謡曲というのは「都会のねずみと田舎のねずみ」の話だと思っていて、それは演歌が真正面からふるさとを唄う…

「ゆ」の揺れ

浜田真理子+ONJO。じつは浜田さんの歌を聴くのはCDも含めて今回が初めてだったのだが、一曲めの「Beyond」冒頭で一気に引き込まれた。いちばん最初の曲の出だしの音というのは、恐ろしいほどの緊張を強いるものだと思う。その「ゆこうよ」ということばの「…

コンクリート感覚

京都へ。薄荷葉っぱ(オクノ修の「去年の夏」のカバーたのし)、トウヤマタケオ楽団と、ナイーヴで明るい演奏のあと、コンビニに走り、リポDで気合いを入れてから、ぐぐっと夜に傾斜。山本精一+羅針盤(大友良英ヴァージョン)。世界の果てにカミサマを置く…

確かさとせわしなさ、あるいは因果交流電燈

コグさんからインターバル撮影映像いただく。コグさんの買ったばかりのデジカメについていたインターバル撮影と、彼女の趣味の園芸とが出会ったとき、この驚くべき映像群が誕生した。コグさんはこのところ、ベランダに毎日しかけるために、デジカメを外に持…

ピアニシモは、音の小ささだけを意味するのではない

Filament Boxを少しずつ聴いている。CDでは音量が調節できるので、ライブのように、座る位置によって音量が決まってしまうわけではない。しかし、CDのボリュームを上げるということは、大きい音のライブを聴くと言うことではない。ピアニシモの演奏のボリュ…

ブログ作法トークショーパーティー

オフサイトを辞して麻布十番に。本当はもっといろいろな人とお話すればよかったのだが、パーティーというのがすこぶる苦手で(ならば来なければよいのだが、来る前はいつも苦手が克服できそうな気がするのだ)、完全にソファの片隅に引きこもってしまった。…

オフサイト最後の夜

代々木オフサイトで、Filamentライブ。オフサイトはこの夜をもって閉店する。 大友さんは、レコード針の先、コードの針金の先を接触させるアナログ演奏なので、その手つきによって微細なコントロールが生まれることはすぐに察しがつく。いっぽうSachiko Mの…

風景化する鶴瓶

朝、三回生のゼミで「きらきらアフロ2003」を、鶴瓶の応答ぶりに注意しながら見ていく。これは予想を越えて勉強になった。鶴瓶の計算された応答のコントロールもさることながら、松嶋尚美のあざやかな暴走ぶり。 たとえば、キャバクラで悪酔いした女が、客の…

The Devil in the White City(「悪魔と博覧会」)書評

The Devil in the White City: Murder, Magic, and Madness at the Fair that Changed America作者: Erik Larson出版社/メーカー: Vintage発売日: 2004/02/10メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログ (1件) を見る 一九世紀末の万博と犯罪の話、と聞く…

そうなのかしら?

ところで、「UFO」の歌詞、あらためて口ずさむとすごいよなー。もしかしたらもしかしたら、と言いながらどんどん結論を追いつめていくのだが、しかしその結論を言霊化してしまうとこわいので、ただ「そう」と指し示すだけなのだ。「これってあれだよなあ」と…

iPodで呼び出されるカセット感覚

モーツァルト、といえば小林秀雄なのだが、それを感情論として読み直すこと。もうひとつ、先月から断続的に考えているiPodや原音の話だが、小林秀雄の「蓄音機」は、メソッド派の行き着く先の議論として見逃せない。考えてみると、ぼくのユーミンに対する聞…

譜面というexpression

モーツァルト、といえば小林秀雄なのだが、「モオツァルト」「表現について」「蓄音機」を感情論として読み直すこと。確かに感情が揺らされるとき、それは、何をてがかりにしているか。感情が確かに揺れること(リアルなこと)と、「再生」「原音」の質が高…

遠くで叱られる感覚と分数コード

「憂鬱と官能を教えた学校」の重要なテーマはじつは、感情を支えるメソッドは何かという問題だと読んだ。ドミナントモーションが何かということよりも、なぜそのようなモーションがこれだけ人々の心をとらえてしまったのかが問題だ。ノウハウとしてはV7 -> I…

感情を乗せるメソッド

昨年の今頃はベートーヴェンの弦楽四重奏曲を聴いて、それをもとにダマシオの感情論のスコアについて語るというのを講義でやっていた。今年はモーツァルトにしようかと思い、朝起きたらハイドンセットをスコアを見ながら繰り返し聞いている。スコアを見なが…

planB通信「聴く」

planB通信に大友さんが書いている「聴く」に、先月あれこれぼくが日記で吹いた話が引用されてます。お目にとまったらご一読を。

音痴シミュレーション、弾けているのに弾けている気がしない

ところで、菊池氏のとりあげている「デサフィナード」は、じつはそうした名曲集にはほぼかならず収められており、しかもコードがひときわトリッキーな曲だ(その点でも、p98のくだりは、「おおおおおっ」と多大なる共感を抱いて読んだ)。「デサフィナード」…

バークリーメソッドを逆にたどる

十代の頃、中学生新聞か何かの裏に載っていた洋楽の譜面で、コードというものに初めて出会った。おたまじゃくしのほうは音楽の授業で習ったことがあったので、すらすらとは読めないまでも、なんとなく意味はわかったが、AmとかG7とかいう記号のほうは、最初…

バークリーメソッドを逆にたどる

喫茶店で「憂鬱と官能を教えた学校」(菊地成孔+大谷能生)。無類におもしろい。次々と目ウロコ。 とくに、ぼくのように、自己流でコード弾きを覚えて、長らく音楽を縦割りで考えていた人間にとっては、思い当たるフシがありすぎて怖いほどだ。ぼくが先月来…

服部カーニバル@代々木オフサイト

昼に彦根を出発。東京へ。夕方、代々木のスタジオにて宇波くんと1時間ほどリハ。オフサイトに移動。軽く打ち合わせ程度にリハをして、8時ほぼきっかりに『第1回 服部カーニバル』開始。二階は立錐の余地もないほどの満員御礼。(といってもキャパ20人くら…

任地で聞く音楽

他の席にはTVモニタがあるというのに、ぼくたち二人の席はたまたまTVモニタのない席で、彼は「だまされた」といいながらリュックからごついCD携帯ケースを取り出す。任地ではこれといって娯楽がないので、CDはいい慰めになるのだという。「どんなの聞いてる…